東京高等裁判所 昭和63年(行ケ)80号 判決
一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本件考案の要旨)及び三(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。
二 そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。
1(一) 成立に争いのない甲第二号証(本件公報)によれば、本件考案の技術的課題(目的)、構成及び作用効果は、次のとおりであると認められる。
本件考案は、建物の屋根、又は外壁に用いる面構造材の構造に関するものである(本件公報第一頁一欄第二八行、第二九行)。
従来、一般家屋の外面に使用されている金属板は継目などから雨漏りなどが生じやすく、しかも耐圧性に劣るので屋根葺きしたとき表面を歩き難いばかりでなく積雪時には継目が押し潰される等の問題点があつた。本件考案は右知見に基づき、非常に簡単に組立てができ、かつ雨漏りなどを確実に防止できるばかりでなく、耐圧強度を高めることを目的とし(同第一頁一欄第三〇行ないし第三七行)、本件考案の要旨記載のとおりの構成を採用したものである(同第一頁第一欄第一五行ないし第二六行)。
本件考案は、右構成を採用したことにより、取付けに当つては順に互いに他に組み込んで取り付けていくだけでよいという簡単なもので、しかも各構造材の係止が非常に確固となり確実に屋根に取り付けることができる。また、雨水等の屋内への侵入を確実に防止することができるばかりでなく、耐圧強度が高いので屋根上に積雪や人が載つて荷重がかかつたような場合でも十分に耐えられる等の作用効果を奏するものである(同第二頁第三欄第一六行ないし第四欄第八行)。
(二) 他方、成立に争いのない甲第三号証によれば、第一引用例記載のものは、金属屋根瓦の接合構造に関するものであつて(明細書第一頁三行)、風による吹き上げや振動が生じにくく、雨仕舞が良好であり、しかも施工性が良好な金属屋根瓦の接合構造を提供することを目的とし(同第二頁一四行ないし第一七行)、板状体の後端を全長に亘り上方と前方へ折曲して中空で断面路L字状の係合突脈の内方折曲部の下片を上方へ凹に湾曲して湾曲凹部を形成し、板状体の前端部を下方と後方へ折曲して係合溝を形成し、係合溝の下片を上方へ凸に湾曲させて湾曲凸部を設けるとともに下片の先端部を下方へ折曲して係合足部を設けて金属屋根瓦を形成し、下方の金属屋根瓦の係合突脈に上方の金属屋根瓦の係合溝を係合し、係合突脈の湾曲凹部に係合溝の湾曲凸部を係合するとともに係合溝の下片の係合足部を板状体上に当接させ係合凸脈の前片と係合溝の前片との間に間隔を設けてなる金属屋根瓦の接合構造なる構成を採用し(同第一頁第四行ないし第一七行)、右構成を採用したことにより、屋根葺きの施工が簡単迅速に行え、毛細管現象も防止でき、また、風による屋根の吹き上げが生じにくくなり、さらには、上下の金属屋根瓦の接合が強固に行われ、風による屋根の振動が防止できる等の作用効果を奏するものである(同第五頁第一行ないし第一九行)ことが認められる。
(三) また、成立に争いのない甲第四号証によれば、第二引用例には、「傾斜部と水平部とを有し、傾斜部の前端には上面と、該上面の先端から下向きに屈曲した前面と、該前面の下端から折返し状に屈曲した下面とからなる係止部を設け、水平部の後端には水平部に向かつて折返し状にすると共に二つの傾斜面からなる山形の折曲部を形成した係止片からなる係合部を設け、前記山形の折曲部の高さを前記した係止部の下面から上面までの高さとほぼ同一にした屋根板」について記載されていることが認められ、この点における審決の認定に誤りはない。
原告らは、第二引用例記載のものの係合部の二つの傾斜面からなる山形の折曲部には係止部分や係止機能がなく、したがつて、係合部を「二つの傾斜面からなる山形の折曲部を形成した係止片からなる係合部」とした審決の認定はその構成を不正確に捉えたものであつて、「二つの傾斜面からなる折曲部を有し、水平部の後端の折返し部分で係止部を係止する山形の係合部」と認定すべきである、と主張している。
しかしながら、前掲甲第四号証の「使用状態を示す参考図(別紙図面三参照)」によれば、第二引用例記載のものの係合部が係止部と係合するとき、二つの傾斜面からなる山形の折曲部の頂部は傾斜部前端の係止部の上面と接すると共に、傾斜面先端部は係止部の下面の折返し状に屈曲する部分に接していることが認められ、右事実からすると、「二つの傾斜面からなる山形の折曲部」は係止部を係止する機能を果たしている係止片であると解されるから、審決の前記認定が構成を不正確に捉えたものとはいえず、その認定に誤りはない。
2 一致点の認定について
原告らは、「第一引用例記載のものにおける係止片とは内方屈曲部3の湾曲凹部3aであつて、湾曲凹部3aと連結部3bとからなる内方屈曲部3の全体ではない。したがつて、本件考案でいう係止片と第一引用例でいう内方屈曲部3とは構成が全く相違するものであり、両者に実質的な差異はないとする審決の認定は誤りである。」旨主張する。
前掲甲第三号証によれば、第一引用例には、「板状体1の後端近くを全長に亘り上方と前方に折曲して中空で断面路L字状の係合突脈2の内方屈曲部3の下片を上方に凹に湾曲して湾曲凹部3aを形成し(第一頁第一九行ないし第二頁第三行)」「係合突脈2の内方屈曲部3の下片は上方へ凹に湾曲されて湾曲凹部3aが形成されている。この湾曲凹部3aと板状体1との連結部3bは第2図のように平面状であつても第3図のように湾曲面状であつてもかまわない(第三頁第一行ないし第五行)。」「係合突脈2の湾曲凹部3aに係合溝4の湾曲凸部4aを係合するとともに係合溝4の下片の係合足部4bを板状体1上に当接させ(第二頁第九行ないし第一一行)」「係合足部4bは第2図や第3図のように係合突脈2の連結部3bに沿う形状であつても第4図のように連結部3bから離れるような形状であつてもよい(第三頁第一〇行ないし第一三行)。」との記載があることが認められる。右事実からすると、内方屈曲部3は板状体1の後端を上方に折曲した連結部3bと、さらに前方に折曲した湾曲凹部3aとから構成されており、係合溝4の湾曲凸部4aと係合して係合突脈2に係合溝4を係止するのは湾曲凹部3aであり、連結部3bは板状体1との連結の役目をし、また湾曲凹部3aの前方への折返し部としての役目を果たしているものであることが認められ、内方屈曲部3は全体として係止することを主機能とした部材であり、その湾曲凹部3aにおいて係止しているものであると理解することができる。してみると、「第一引用例でいう「内方屈曲部3」は係合溝4の一部4aを係止片させるために屈曲された部分を指していて係止片とみることができる」とした審決の認定に誤りはない。
そして、このような内方屈曲部3と本件考案における係止片との構成を対比してみるに、前掲甲第二号証によれば、本件考案の詳細な説明には、「係合部5は水平部3の後端を折返し状にした係止片(本件公報第一頁第二欄第一一行ないし第一三行)」「水平部3と係止片9との間には奥に深い受溝13を有し(同第一頁第二欄第一七行、第一八行)」「第3図は本考案の他の実施例を示すもので、係合部5の受溝13の上下幅を大きくし、係止片4を差し込んだとき受溝13の内部と係止部4の下面8との密接を防止して微少な間隔17を形成するようにしたものである。したがつて雨水等の毛管現象を間隔17でも防止することができ、より確実に雨水の侵入を防ぐことができる(同第二頁第三欄第九行ないし第一五行)。」と記載されていることが認められる。右記載事実及び本件公報の第3図(別紙図面一参照)によれば、本件考案における係止片9は、面構造材の水平部3の後端を折返し状にして形成されているものであり、係止片9と水平部3との間には受溝13を有し、係止部4の下面8と接しない部分である間隔17を設けることが示されている。このことからすると、係止片9と水平部3との折返し位置には、係止片9と水平部3との連結部としての役目をすると共に間隔17を形成するための折返し部分が存在しており、この折返し部分を形成することによつて、毛管現象を防止し、雨水の侵入をより確実に防ぐことができるという作用効果を奏するものであることが認められる。
他方、第一引用例記載のものにおける内方屈曲部3は、係止機能を有する湾曲凹部3aと、板状体1と湾曲凹部3aとの連結及び湾曲凹部3aの前方への折返し部としての役目を果たしている連結部3bとからなつていることは前記認定したとおりである。そして、前掲甲第三号証によれば、第一引用例には、「第4図のように係合突脈2の連結部3bと係合溝4の係合足部4bとの間に空隙を設けておくと雨仕舞がさらに良好になる(第五頁第二〇行ないし第六頁第二行)。」と記載されており、連結部3bは係合足部4bと離れている場合は、その部材間に空隙が生じ、これによつて毛管現象を防ぎ、雨水の侵入を防ぐことができるという作用効果を奏するものであることが認められる。
してみると、本件考案における「係止片9」と第一引用例記載のものにおける「内方屈曲部3、すなわち湾曲凹部3a」はともに係止機能を有するものであり、また、本件考案における「折返し状部分」と第一引用例記載のものにおける「連続部3b」は共に板状体1(水平部3)と湾曲凹部3a(係止片9)とを連結し、湾曲凹部3a(係止片9)の前方への折返し部としての役目を果たしているものであつて、その奏する作用効果も同様であると解される。
したがつて、本件考案でいう「水平部に向かつて折返し状にした係止片」と第一引用例でいう「前方へ折曲して形成した内方屈曲部3」との間に実質的な差異はない、とした審決の一致点の認定に誤りはなく、原告の前記主張は理由がない。
3 相違点<2>に対する判断について
第一引用例記載のものにおける係止部は、「板状体の前端部を下方と後方へ折曲して係合溝を形成し、係合溝の下片を上方へ凸に湾曲させて湾曲凸部を設けるとともに下片の先端部を下方に折曲して係合足部を設け」からなる構成であることは前記1(二)で認定したとおりである。そして前掲甲第三号証によれば、第一引用例には、「下方の金属屋根瓦Aの後端部の係合突脈2に上方の金属屋根瓦Aの前端部の係合溝4が係合されている(第三頁第一五行ないし第一七行)。」「係合突脈2の内方屈曲部3の湾曲凹部3aに下方より係合溝4の湾曲凸部4aが当接するとともに係合足部4bの下端は板状体1に当接している(第三頁第一七行ないし第二〇行)。」「さらに下方の金属屋根瓦Aの係合突脈2の外方折曲部2bの角部には上方より上方の金属屋根瓦Aの板状体1の下面が当接している(第四頁第四行ないし第七行)。」「係合突脈2の内方屈曲部3の下片に湾曲凹部3aを設けて係合溝4に設けた湾曲凸部4aをこの湾曲凹部3aに係合するとともに、係合溝4の係合足部4bの下端を板状体1に当接させてあるから、係合溝4の湾曲凸部4aが係合突脈2の湾曲凹部3aから抜けて係合が外れることがない(第五頁第六行ないし第一一行)。」「またさらに下方の金属屋根瓦Aの係合突脈2の外方折曲部2b、湾曲凹部3a、板状体1のそれぞれに上方の金属屋根瓦Aの板状体1の下面、係合溝4の湾曲凸部4a、係合足部4bの下端がそれぞれ当接しているから上下の金属屋根瓦A、Aの接合が強固に行なわれ、風による屋根の振動が防止できる利点を有する(第五頁第一三行ないし第一九行)。」と記載されていることが認められる。右事実からすると、係合突脈2の内方屈曲部3の湾曲凹部3aと係合溝4の湾曲凸部4aとが接し、係合突脈2の外方折曲部2bの角部と金属屋根瓦Aの板状体1の下面とが接することにより、係合溝4は係合突脈2にはまり込む形で係止され、さらに、係合溝4の係合足部4bと板状体1の後端部とが接することにより金属屋根瓦同士の接合がより強固になるものであることが認められ、係合溝4は係合突脈2にはまり込む形で係止されるものであり、係合溝4はそれ自身で係止機能を有しているのに対し、係合足部4bは右はめ込みを補強するものであつても係合突脈2と係合するものではなく、係合溝4と係合足部4bは係合突脈2に板状体1の前端部を係止することについて一体不可分的に機能しているものではないと解される。
他方、第二引用例には、屋根板の傾斜部の前端に設ける係止部について、上面と、該上面の先端から下向きに屈曲した前面と、該前面の下端から折返し状に屈曲した下面からなる構成が開示されていることは前記1(三)で認定したとおりである。
してみると、係合突脈2に板状体1の前端部を係止するために、第一引用例に記載の「係合溝4と係合足部4b」に代えて第二引用例に記載の前記構成を採用して本件考案のようにすることは当業者が必要に応じてきわめて容易になし得ることと認められる。また、そうしたことによる作用効果も第一引用例及び第二引用例記載のものから予測し得ない格別のものとは認められず、相違点<2>についての審決の判断に誤りはない。
原告らは、係止部に係合足部を有する第一引用例記載のものに、係止部に係合足部が存在しない第二引用例記載のものを採用することはできないし、仮に採用し得たとしても、第一引用例記載のものが奏するところの板状体A、Aの接合が強固になつて風による吹き上げや振動を防止するという特有の作用効果は期待できず、このように置換の対象となる構成が互いに対応関係にあるとはいえない第一引用例記載のものにおける係止部の構成に代えて第二引用例記載のものを採用することはきわめて容易なこととはいえない、と主張している。
しかしながら、第一引用例記載のものにおける係合足部4bは係合溝4による係止機能を補強するものであつて、それ自体は係合突脈2と係合するものではなく、係合溝4と係合足部4bは係合突脈2に板状体1の前端部を係止することについて一体不可分的に機能しているものではないことは、前記判示したとおりである。したがつて、係合突脈2に板状体1の前端部を係止するに当つて、第二引用例記載のものには係合足部が存在しないからといつてこれを採用し得ないというものではなく、また、前記認定した第一引用例に記載の技術的事項からすれば、風による吹き上げや振動の防止は係合足部の存在によつて一層強く奏される作用効果ではあつても、その存在によつてのみ奏される特有のものとはいえず、したがつて、原告らの右主張は採用し得ない。
4 相違点<3>に対する判断について
本件考案において、係止片と垂直面との間に介在する部分を傾斜面としたのは毛細管現象の防止をするためであり、一方、第一引用例記載のものが係止片の先端から垂直に立ち上がる前片2aと該前片の上端から後方に向かう水平片とで形成されるほぼ直角な二面としたことにより同様な作用効果を奏していることは原告らも認めるところであるが、原告らは、本件考案は右構成を採用したことにより、毛細管現象を防止すること以外にも、<1>下から順に互いに他に組み込んで取り付けていくだけで各構造材の係止が確固として確実に屋根に取り付けることができる、<2>屋根上に積雪や人が載つて荷重がかかつても十分に耐えられる、という格別の作用効果を奏するものである、と主張している。
なるほど、本件考案が原告ら主張の<1>、<2>の作用効果を奏するものであることは前記1(一)で認定したとおりである。しかしながら、前掲甲第二号証によれば、本件考案の詳細な説明には「屋根を葺くには、下地部分15上に横向きにして構造材1を置き、孔14に釘などの止着具を打ち込んで固定する。この状態では水平部3が下地部分15に密接することになる。次に傾斜上側に位置する構造材の係止部4の下面8を傾斜下側の係合部5の受溝13に十分差し込んだ後、傾斜上側の支持片12の孔14に釘などを打ち込んで固定するのである。このようにして屋根面を形成すると、係止部4は下側の構造材の係合部に係止され、係合部が釘などで固定されるので取付け強度に富むものとなる(第一頁第二二行ないし第三五行)。」「第2図で示すように係合部5の垂直面11が係止部4の上面6を下から支えるので耐圧強度が高まり、施工時に上面を歩いたり雪が積もつても押し潰されることがない(第一頁第三五行ないし第二頁第一行)。」と記載されており、右事実からすると、原告主張の前記<1>の作用効果は、本件考案の全体の構成によつて奏されるものであつて、単に「傾斜面」によつて得られるものではなく、また同<2>の作用効果も、係合部5の全体の構成、とりわけ垂直面11によつて奏されるものであり、「傾斜面」としたことの構成にのみよるものではない。
そして、前記<1>の作用効果については、第一引用例記載のものにおいても奏されることは前記1(二)で認定したとおりであり、また同<2>の作用効果については、第一引用例記載のものにおける「係止片である内方屈曲部3の先端から垂直に立ち上がる前片2aと該前片の上端から後方に向かう水平片とで形成されるほぼ直角な二面」との構成からも奏し得るものであることは当業者であれば容易に理解し得るところである。
以上のように、原告ら主張の右<1><2>の作用効果は、いずれも本件考案が「傾斜面」の構成を採用したことによつて奏されるものであるとはいえないばかりか、これらは第一引用例記載のものにおける係合部の構成によつても得られる作用効果であるから、結局、本件考案における「傾斜面」の構成と、第一引用例のものにおける「垂直片と水平片で形成されるほぼ直角な二面」の構成により得られる作用効果は共に毛細管現象の防止という同様なものであり、したがつて両者の右各構成に基本的な差異があるとはいえないとした審決の認定、判断に誤りはない。
また、原告らは、「第二引用例記載のものは、二つの傾斜面からなる折曲部を有し、水平部の後端の折返し部分で係止部を係止する山形の係合部なる構成であり、第一引用例記載のもののように係合部に連結部がないし、係止部に係合足部がない。しかも、本件考案でいう係合部の係止片は、水平部の後端の折返し部が相当する。したがつて、第二引用例に記載されている構成を第一引用例に記載の構成に代えることはできない。」と主張している。
しかしながら、第二引用例に記載されている「二つの傾斜面からなる山形の折曲部を形成したもの」が係止片であること、したがつて、第二引用例には、屋根板を係止するための係止片の折返し部から、係止した屋根板の下面に接する折曲部の頂部(上端)に至る部分を傾斜面で接続する点が記載されていることは前記1(三)で認定したとおりであるから、このような第二引用例記載のものの構成よりして、第一引用例記載のものにおける係止片と垂直面との間の接続部分をほぼ直角な二面に形成した構成の部分を、傾斜面として本件考案のようにすることは当業者にとつてきわめて容易なことであつて格別考案力を要することとはいえない。また、本件考案が「傾斜面」としたことによる作用効果は前記認定したとおりであつて、このような係止部と係合部との形状の相違により各構造材の接続部分の内部に空隙部が形成されることによつてもたらされる作用効果は、第一引用例及び第二引用例の記載から極めて容易に予測し得るものであると解される。
したがつて、相違点<3>について、第二引用例記載のものからして、本件考案のようにすることは格別考案力を要することではなく、その作用効果も第一引用例及び第二引用例の記載からきわめて容易に予測し得るとした審決の判断に誤りはない。
原告らは、第二引用例記載のものには第一引用例記載のもののように係合部に連結部がないし、係止部に係合足部がない、また本件考案でいう係合部の係止片は水平部の後端の折返し部が相当する等主張しているが、審決が相違点<3>として挙げているのは、本件考案と第一引用例記載のものとの間の係止片と垂直面との間に介在する接続部分の構成の相違であり、第一引用例記載のものの右の点における構成に代えて第二引用例記載のものの構成を採用することの容易性を判断しているのであつて、右相違点の判断に当つては、原告らが主張する前記構成要件の有無は問題とすべき技術的事項ではない。
5 以上のとおりであるから、本件考案は第一引用例及び第二引用例記載のものに基づいて当業者がきわめて容易に考案することのできたものとする審決の認定、判断は正当であつて、審決に原告ら主張の違法はない。
三 よつて、審決の取消しを求める原告らの本訴請求は失当として棄却することとする。
〔編注1〕本件考案の要旨は左のとおりである。
傾斜部と水平部とを有し、傾斜部の前端には上面と、該上面の先端から下向きに屈曲した前面と、該前面の下端から折返し状に屈曲した下面とからなる係止部を設け、水平部の後端には水平部に向つて折返し状にした係止片と、該係止片の先端から傾斜状に立ち上る傾斜面と、該傾斜面の上端から下向きに垂直に曲げた垂直面と、該垂直面の下端から後方に延設した支持片とからなる係合部を設け、前記垂直面の高さを前記した係止部の下面から上面までの高さとほぼ同一にした建築物用面構造材(別紙図面一参照)。
〔編注2〕本件における図面は左のとおりである。
図面(一)
<省略>
図面(二)
<省略>
<省略>
(以下省略)